2017年上半期ベスト

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  1. HYUKOH『23』
  2. w-inds.『INVISIBLE』
  3. tofubeats『FANTASY CLUB』
  4. MONDO GROSSO『何度でも新しく生まれる』
  5. SZA『Ctrl』
  6. 柴田聡子『愛の休日』
  7. Cigarettes After Sex『Cigarettes After Sex』
  8. 橋本絵莉子波多野裕文橋本絵莉子波多野裕文
  9. Bonobo『Migration』
  10. YOGEE NEW WAVEWAVES
  11. Future『FUTURE』 
  12. Lorde『Melodrama』
  13. Calvin Harris『Funk Wav Bounces Vol. 1』
  14. Cloud Nothings『Life Without Sound』
  15. SHISHAMOSHISHAMO 4』
  16. 加藤ミリヤ『Utopia』 

 

今年の上半期は正直ゴタゴタしていて音楽を聴くのが難しかったけど、幸いなことに状況は落ち着き、6月はずいぶん聴けた気がする。w-inds.のアルバムを聴いている時間は楽しかった。HYUKOH(ヒョゴ)には驚かされた。彼らは韓国のバンドだけど、英語圏を含め世界中のポップミュージックの既存の構造が音を立てて崩れ始めている。tofubeatsの"lost decade"は遠くになりにけり。だけど僕らには"Fantasy Club"がある。"何度でも新しく生まれる"のだ。

 

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  1. ラ・ラ・ランド
  2. 光をくれた人
  3. ムーンライト
  4. LION
  5. マンチェスター・バイ・ザ・シー
  6. メッセージ
  7. 名探偵コナン から紅の恋歌
  8. 映画ドラえもん のび太の南極 カチコチ大冒険 

 

6/30までに観れた映画は8本。旧作も一本しか観ていない体たらく。ただ幸福なことに全部おもしろかった。少し冗長に感じた「メッセージ」でさえ今は良い思い出。「ムーンライト」「LION」「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 「メッセージ」に共通するのは優れた映像と独特なリズムだと思う。どれもなかなかハードな物語なのにそれを劇的に描こうとしていない。抑制した演出で物語を丁寧に紡ぎながら、静かだけど深い感動をもたらすすばらしい映画だった。ただ、俺は大味も嫌いじゃない。「ラ・ラ・ランド」は物語が大味であるにもかかわらず、それが最後まで綻びず、何度も絶頂に連れて行ってくれた。こんなことが映画にできるなんて!「光をくれた人」も優れた映像と優れた演技で天国と地獄を行き来しながら、思いもよらない場所を僕を運んでくれた。今の映画は見ている僕らをどこに連れて行ってくれるのかが問われているのかもしれない。「コナン」でさえ「そんなアホな」を飛び越して度肝を抜かれるような場所に連れてってくれる。

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現時点で国内最高のサービス精神/椎名林檎『椎名林檎と彼奴等がゆく 百鬼夜行2015』

以前観た『(生)林檎博’14 ―年女の逆襲―』同様、ライブ映像作品として優れていると感じたのでとりあえず思ったことを羅列するね。

  1. 現時点において日本で最高級のプレイヤーが集まっている
  2. ただでさえ評価された楽曲を演奏しているにも関わらず、ほぼ全曲に新たなアレンジを施している
  3. 音楽的にそこまでやっているにも関わらず、映像もかなり作り込む
  4. さらに本人もコスプレする
  5. しかもかなりエロい衣装でコスプレしてる
  6. その上ゲストもいる
  7. 振り付けはMIKIKO
  8. ただでさえ29曲も演奏する
  9. これだけやっておきながらホールツアー
  10. おまけに同じホールを借りて無観客で10曲も追加収録してる
  11. これが7020円で買える(amazonだと5000円台からある)
  12. アホか

 本当に馬鹿なんじゃないの?どう考えても釣り合ってない。余計なお世話なのはわかっているが、きちんと利益が出たのか心配になるほど豪華絢爛であると同時に細かな部分まで作り込まれたとんでもないライブ映像集である。

選曲は「百鬼夜行」の名の通りおどろおどろしい曲が中心で、序盤に「そうだ、樹海に行こう」というとんでもないコピーが演出で登場するほど初期を思わせる悪趣味な感じがするのだが、一方でどこか参加メンバーを思わせる曲もあった。近年の『三文ゴシップ』『日出処』からが割合的に多い気がするものの、東京事変の前期/後期の曲もやったり初期の曲もやったりとファンから「神セトリ」と呼ばれたことも頷ける。

またファンにとってはすでにお馴染みであるのだが、それはもうエロいコスプレをしてくれる。初期を知る人には懐かしい「本能」の時のナース姿もやるし(でも本能はやらない)、中盤ではドキッとするような脱ぎっぷりを見せてくれる。ただインタビューで「男性向けと思ったこと1回もない」と話している通り、エロいと言ってもサザンオールスターズのような露骨な健康的なエロは皆無で、例えば安野モヨコのマンガに出てくるようなフェティッシュなエロさで、それこそ女性が喜びそうな美しさなのだが、男性が見ても普通に興奮する。

ただそんな神セトリで、なおかつアホみたいに敏腕のミュージシャンと一緒にアレンジまで作り込みながら、同時にアリーナ公演でも通用するような映像も映し出し、なおかつエロい衣装で客前に出てくる。サービス精神旺盛を通り越して病的ではないのか?

そしてその姿が例えば僕の中では去年の小沢健二と重なるし、さらに言うなら往年のサザンとも重なる。自分の楽曲にある程度の自信はあっても「それだけで通用するほど甘くない」という徹底した過小評価が彼女の根底にあるのではないか。そしてそれは自信ある新曲を作り上げたにも関わらずスクリーンで歌詞を映し出し、なおかつリピートしてお客にも歌わせる小沢健二や、ドーム公演が状態化して演出家状になっている桑田佳祐とも重なるのだ。

自信の楽曲に対する過小評価と、それを補って余りあるとんでもないライブだった。通常盤のパッケージがしょぼいとかもう忘れました。必見でござんす。

 

ドキドキを取り戻すための/tofubeats『FANTASY CLUB』

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tofubeatsの『FANTASY CLUB』を毎日聴いている。正直に言うと、このアルバムはtofubeatsの最高傑作ではないし、おそらく現時点における彼の最高傑作は『lost decade』なのだが、ただ、滅茶苦茶いいのだ。

今作は前作の『POSTIVE』や前々作の『First Album』と比べるとJ-POPの要素が薄い。一応ゲストボーカルもいるのだが、どちらかと言うとYOUNG JUJUはラッパーとして、suger meもコーラスとしての意味合いが強く、あまりJ-POPらしい曲が見当たらない。日本語のポップミュージックと言えばその通りなのだが、歌謡性は薄く、ヒップホップやハウスを行ったり来たりしている印象がある。

またゲストボーカルの意味合いが少ない反面、tofubeats本人が歌う比率が大きい。以前同様オートチューンを用いているのだが、前に出ようとする意志が以前よりもずっと強い。前だと例えば『ディスコの神様』のカップリングのいわゆるデモ版の「衣替え」では申し訳程度に本人が歌い(でもすごく良い)、アルバムではBONNIE PINKが歌ったりしていたのだが、今作の「SHOPPINGMALL」「CALLIN'」「WHAT YOU GOT」「BABY」といった曲はtofubeatsが「tofubeats自身が歌うこと」を想定して作られているかのようだし、実際、力強く歌われている。

それにしてもこのアルバムを聴けばワーナー以降のtofubeatsに何があったか察することができるし、良いことも悪いこともというか、どちらかと言うと悪いことの方がたくさん起こって、それに対する怒りとか葛藤とか苦しみが多かったように思えるのだけど、それでも「BABY」において

ドキドキは今以上のBABY

の部分が4年前に南波志帆が「LOST DECADE」で歌った

ドキドキしたいならこれを
ワクワクする瞬間このときを
わすれないで
わすれないで

と重なっていて、もちろん変わるものもあるけれど、音楽で一番大事なこの部分を忘れていない事実にぐっとくる。

あと個人的にはやっぱりフランク・オーシャンの『Blonde』に重なるところが多かった。単純な物量でいい切れる話も出ないけど、もしtofubeatsが数年以内に『First Album』や『POSTIVE』のようなゲストを配置しながら、同時に『FANTASY CLUB』のような内省的なアルバムを作ることができたら……と妄想することはあるのだけど、やはりtofubeatsは自分自身の道を歩むと思う。